こちらの記事では、2024年3月18日(月)に扇町ミュージアムキューブにて行われた、ネビュラエンタープライズ専務取締役の永滝陽子とコトリ会議の制作を担当する若旦那家康さんによる、『雨降りのヌエ』公演ゲストトークのアーカイブを、テーマごとにお届けします。
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【1】公演チラシと関わり続ける、ネビュラエンタープライズの20年(このページ)
【2】コロナ禍でも、おちらしさん会員から聞こえてきた生の声
【3】創客にむけて。WEBで、チラシで、「話題」はどう仕掛けられるか?
【4】美術展のチラシからハッとすること
【5】チラシ談義で「実際、このデザインどう!?」
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このトークイベントに観客として参加したネビュラエンタープライズ代表の緑川憲仁による記事は、以下からお読みください!
▶▶あえて公演期間中に、しかも劇場で語る、宣伝のことを。「演劇のチラシと広報」トークイベントからの考察
【1】公演チラシと関わり続ける、ネビュラエンタープライズの20年
コトリ会議・若旦那家康(以下、若旦那):
今回のゲストはネビュラエンタープライズの永滝陽子さんです。僕がネビュラエンタープライズを知ったのは、チラシ折り込み代行でしたが、チラシ宅配サービス「おちらしさん」をお願いしたこともある中で、いろんな取り組みもされています。会社自体にさまざまな発想があって、WEB記事も作っていただいたりしているので、この機会に関西でも、話を聞けたらなと思ってお呼びしました。よろしくお願いします!
ネビュラエンタープライズ・永滝陽子
ネビュラエンタープライズ・永滝陽子(以下、永滝):
はい、よろしくお願いします。私たちの会社は、2020年に今のネビュラエンタープライズという社名に変更しました。元々はNext(ネクスト)という屋号で、気がつけば今年で20年目です。
若旦那:20年もあると、それこそSNSも始まって、公演の宣伝や広報も形も変えてきていますよね。今回なぜ永滝さんを呼びたかったかというと、「チラシって今どうなの?」っていうことを一緒に考えたかったんです。コロナ禍の前から「もう公演チラシはいらないんじゃないか」という意見も一部ではありましたよね。まさに僕が20何年前に小劇場の世界に入り、そのときから何かチラシは懐疑的にも見られていたけど、結果ずっと無くなっていない。コロナ禍を経て多少減ったような気もするけれど、やっぱり僕らもチラシを作っています。ひょっとしたら僕が古い人間だからかもしれないけれど、やっぱりチラシは作り続けないとあかんよなと思っていて。その時代によってネビュラエンタープライズの動きもいろいろ変えてきたのかということが、聞きたかったところなんです。
コトリ会議・若旦那家康さん
永滝:「20年」をキーワードにNextが法人化したころを振り返えってみると、もちろんSNSはなかったですよね。2000年代の初め頃は、チラシを作りやすくなった時代ではあったと思います。それこそ、私も自分のキャリアの最初は劇団制作ですけれど、公演チラシの印刷はWEB印刷ではなくて、印刷所で……。
若旦那:色校とかも見てね。
永滝:そうそう。今と一桁違う制作費でチラシを刷っていたと思うんですよ。当時Nextとしても、自分たちでチラシ束の帯用に読み物を作ったりもしていましたけれど、今と比べれば桁が1個多いぐらいの印刷費がかかっていました。そこからWEB印刷が主流となってきて、チラシをデザインするPC環境もすごく良くなって、チラシは作りやすくなった。また関東には大きい劇場も多く建ちましたし、2.5次元のような商業系の公演も増えていきます。うちの会社の歴史も、2000年代はまだ小さなスペースで営んでいたんですが、チラシ倉庫が足りなくなり、作業場も足りなくなり……。
若旦那:入稿しやすくなった分、みんながチラシを作るようになって。しかも劇場も建って、公演をやる人たちが増えると、チラシの量も増えるってことね。
永滝:さっき若旦那さんの仰っていた、「チラシに懐疑的」という歴史も並行してあります。特に中小規模の公演団体さんによる議論は、並行してずっとあったと思うんですけれど、業界全体としては市場がだいぶ大きくなった。うちの主幹事業であるチラシ折り込み代行っていうのは、そういうときに生かしていただきやすいサービスだと思うんです。それで、会社規模も大きくしなきゃということで、今の東京・亀戸に移転しました。コロナ禍の前までは、そうやって皆さんの需要に応えるために、会社の規模も一緒に大きくしていくような時代だったんです。だけどやっぱりコロナ禍で、一気にいろいろ大きな変化が襲いました。
ネビュラエンタープライズが作成する、劇場チラシ束
2020年の春に業界すべてが止まりましたよね。うちもチラシ折り込みでスタッフを養ってますし、営業できる環境が無くなったわけですから、いつ会社を畳んでもおかしくないような状況でした。とはいえ、やっぱりチラシで宣伝する習慣が無くならなかったのも事実です。休業中に「チラシを使って宣伝したい」という団体さんからご連絡をいただき、業界復興のためにもチラシ宣伝を繋げていく使命があると、厳しい経営状態でしたが延命して活動を続けました。
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若旦那家康さん(プロフィール)
演劇制作者、俳優。コトリ会議に所属。ストレンジシード静岡プログラムディレクター。大阪市立芸術創造館スタッフ。
神戸大学在学中から小劇場での活動をはじめ、留年中に入団した上海太郎舞踏公司で制作を担当。
以降、地方公演の小劇場を中心に演劇祭などの制作をつとめる。
永滝陽子(プロフィール)
1976年生まれ、東京都出身。演劇集団キャラメルボックス製作部を経て2007年にNext(現・株式会社ネビュラエンタープライズ)に入社。2017年専務取締役就任。2020年に社名をネビュラエンタープライズに変更、企業理念「どこまでも、人が集う幸せを求めて。」のもと舞台芸術の振興にむけた事業推進に取り組む。主なサービスに「チラシ折り込み代行サービス」「おちらしさん」「WEB広告代行サービス」「時々海風が吹くスタジオ」の運営等。現在、中学生の姉妹の子育て中。